じっぱひとからげ

十把一絡げになんでもかんでもつづる。

会社の飲み会における「傾斜」は夜の飲み会を駆逐する伏線だったのかもしれない

先日、「親睦会はランチにして欲しい」という声が若手と育児時短女性全員が賛成したにも関わらず、夜の飲み会で開催され続けたというまとめを目にした。結果はどうあれその意思表示に対して賛辞をおくりたい。

togetter.com

この話題は単純にまだ過渡期であって、職場のオフィシャルなコミュニケーションの場が夜から昼に移行するのは時間の問題だと踏んでいる。私自身も職場での夜の飲み会の不毛さに辟易していて、ぜひ夜の飲み会から昼のランチに移行することを望んでいる。

リクルートの2015年トレンド予測

これだけ話題になって世間の関心を集めているのであれば、世の中にもっといろいろな意見があるだろうと検索してみたところ、すでにリクルートがこの兆しを捉えて、飲食領域のトレンドとして2014年の終わりに企業のオフィシャルなコミュニケーションの場が昼間に設けられる傾向を発表していた。

f:id:jippahitokarage:20170502060608p:plain
(出典:リクルート 2015年トレンド予測 飲食領域)
http://www.recruit.jp/news_data/release/pdf/20141217_04.pdf

「部ランチ*1」の背景として「子育て世代の女性の就労率の上昇」をとっかかりとして論じている。夜に開催される会社の飲み会は業務時間外に拘束されるという不満があるため、1時間なら1時間できっかり終わり、お酒が飲めない人でも安く、美味しいものが楽しめる「部ランチ」をしようという需要が増えるという予測である。

会社の飲み会の価値の尺度「傾斜」

会社の飲み会といえば、決まって組織の中の若手が幹事として店を予約し、当日の場を仕切るというのが一般的な構図だと思う。私自身も新入社員のころに、職場での飲み会の幹事を任されることも多く、店を探したり、予約をしたり、案内をしたりといった役回りも経験した。ただ、別に会社の飲み会が好きなわけでもないし、やりたくてやっていたわけでもない。だから、完全にこれも会社の仕事とある意味割り切ってやっていたところがある。

やりたくもないことを割り切ってやろうというのはなかなか難しいものだ。そんな私に調子のいい先輩が教えてくれた幹事としての心得、それは「傾斜」だ。

最近の新しい会社のことはわからないが、私が経験してきた職場には必ず「傾斜」が存在した。「傾斜」とは飲み会の会費を役職別、あるいは、その場の主賓の性質によって緩急をつけることを指す。

例えば10人参加の新入社員歓迎会でお高めの税込60,000円の支払いのとき、単純に按分すれば@6,000円といったところだが、役職の内訳が部長x1、課長x2、係長x2、平社員x4、新入社員x1と仮定すると、以下のような支払いになる。これが傾斜だ。

・部長 10,000円
・課長 10,000円
・課長 10,000円
・主任 7,000円
・主任 7,000円
・平社員 4,000円
・平社員 4,000円
・平社員 4,000円
・平社員 4,000円
・新入社員 0円(新入社員は歓迎対象)

傾斜は幹事の腕の見せ所である。10,000円とか取り過ぎだろ!と感じた人もいるかもしれないが、これは前職の慣習である。管理職か否かは会社側の人間か労働者側の人間かの境界線であり、かつ、おおよそ1,000万プレーヤーか否かの境界線にもなっていることもあり、管理職は「足りる?」と言いながらスマートに1万円札を差し出すのがお決まりになっていた。むしろ、これありきで店を選んでいたフシもある。

調子のいい先輩は「傾斜をつけないと、上の人にむしろ失礼である」という勢いで私に「傾斜」をたたき込んだ。「いいか、幹事なんか面倒な仕事を引き受けるんだから、自分はわざわざ金は払わなくても良い。自分が金を払わなくて済み、かつ、自然な傾斜を考えるんだ。いや、むしろ、利益を出したってかまわない」

・部長 10,000円
・課長 10,000円
・課長 10,000円
・主任 7,000円
・主任 7,000円
・平社員 5,000円
・平社員 5,000円
・平社員 5,000円
・平社員 1,000円(私・幹事)
・新入社員 0円(新入社員は歓迎対象)

こうして、私が幹事をするときは、先輩の教えの通り、できるだけお金を払わないような形で傾斜をつけることにした。利益を出そうとして出すのはさすがに気が引けたが、すべて1,000円単位の支払いにし、かつ、自然な傾斜をつけようとすると、どうしてももらいすぎてしまうという場合も無くはなかった。

管理職からすれば10,000円という出費は大きいものの、社員とコミュニケーションをとることができる場が自然発生的に用意してもらえるとすれば安いものだし、昭和特有の「支払ったったわ、ドヤァ」という優越感にもひたれるだろう。「課長、ごちそうさまッス」という呪文を唱えると安く飲み食いができるとあらば、平社員も多少のお得感もあるかも知れない。

「傾斜」とは、行きたくもない会社の飲み会の価値観を参加者ごとに最適化する大発明だと思った。

ダイバーシティは「お金」ではなく「時間」を選択した

ところが、結局のところ、会社の飲み会に対する不満は「お金」だけではなく「時間」にもあることをリクルートはすでに2014年時点で唱えている。

f:id:jippahitokarage:20170502084837p:plain
(出典:リクルート 2015年トレンド予測 飲食領域)
http://www.recruit.jp/news_data/release/pdf/20141217_04.pdf

会社で働くことそのものが人生であった時代は終わり、多様な生き方がある。だから、勤務時間外の時間の使い方は人それぞれの価値観がより際立つようになってきた。前述の傾斜では、あえて触れていなかったが、今現在の私のポジションを前述の会社の飲み会傾斜で言えば「少し多く払う側」に立ち始めている。

・部長 10,000円
・課長 10,000円
・課長 10,000円
・主任 7,000円
・主任 7,000円(私)
・平社員 5,000円
・平社員 5,000円
・平社員 5,000円
・平社員 1,000円(幹事)
・新入社員 0円(新入社員は歓迎対象)

はて、私は飲食代にプラスアルファでお金を支払ってまでこの会に価値を感じているだろうか。ちょうど最近疑問に思い始めていたところだ。もちろん、新入社員を歓迎する気持ちがないわけではないが、夜に飲み会を開催して、多めにお金を払うことだけが歓迎する気持ちを表す手段ではないだろう。それこそ、前述のリクルートが作った言葉「部ランチ」でもかまわないわけだ。ランチタイムの1時間という限られた時間と少ない予算の中でみんなの価値を最大化する方法をあらためて考えなおしたい。

お金と時間を惰性で夜の飲み会につぎ込むくらいなら、嫁と二人でゆっくり外食をする時間にあてたほうが良いのではないだろうか。毎日顔を合わせる職場の人よりも、たまにしか会うことができない友人らと飲みにいったほうが新しい知見が得られ、充実感を得られるのではないだろうか。少しずつそう考えるようになってきた。

ダイバーシティという意味で言えば、なにも会社の給料だけで生計を立てるという生き方だけではない時代になっているはずなので、会社の役職の上下と形成している資産の大小は必ずしも一致しない。管理職の「支払ったったわ、ドヤァ」とお金の支払いだけで優越感に浸れる時代はもう随分前から終わっているのである。

我々は飲み代の高い安いに一喜一憂するのではなく「本当に同じ時間を一緒に過ごしたい人と過ごすこと」を重要ととらえて、それを選択する時代に突入しているのである。価値の尺度としての「傾斜」は夜の飲み会を考え直す伏線だったと言って良いと思う。

飲み会に関する記事はこち

blog.jippahitokarage.com

*1:名前が少しイマイチだな…と思って、他の年のトレンド予測を見てみたらすべてダジャレになっていたので、"brunch"と"部のランチ"をかけたダジャレであることがわかる。「ダジャレ縛り」と考えれば頑張ったほうだと思う